乾坤一滴のカヌーで関東のバス釣りに勝負するつもりだったけど…
結果は見事に惨敗し、釣りもカヌーも大失敗に終わった。
駐車場で動かぬカヌーを見る度に胸が痛くなって、目をそらすようになった。
それと共に何となくバス釣りをあきらめ気味となった。
 
 
でもね、本当にひょんな事からバス釣りをする事が出来たんだ。
 
 
春の転職から、もう秋になっていた頃…
会社の先輩と昼飯を食べていた時に何となく趣味のバス釣りの話になった。
その人はしないけどテレビで見たりとかで興味があるって感じだった。
僕は2、3説明をしてあげ、ただ関東ではやったことがなくて勝手が解らず困ってるって話した。
やりたくて仕方がないけど、どうにも出来ずに困ってるとも。
その先輩は何だ…って顔をし「工場のSさんがやってるよ。聞いてみなよ」なんて言うんだ。
びっくりしたね。Sさんは総務で工場実習で世話になったけど愛想が無くて苦手だった。
まさかなぁ~って感じだった。でもいいや。聞くだけ聞いてみようって思った。
 
工場へは毎週行っていたから、早速翌週にSさんに会いに行った。
最初は怪訝そうに僕の話を聞いていたSさんだったけれども、
僕がバス釣りをすると言うと急に愛想が良くなった。
「なんだ、お前もするんか?」「フローターは持ってるんか?」
「俺の息子もトップが好きなんだぜ」「技術課のKもやってるよ」
矢継ぎ早に質問され、僕のバス釣りに行きたいという希望を聞いて
「今週末にも行くから、お前も来るか?」なんてアッサリと誘ってくれたんだ。
もう天にも昇る気持ちっていうのかな。本当に嬉しかった!!!
やっと…やっと生き返れる! 鰻の手池のバスが心に浮かんだ!
 
その場で約束をした。Sさんの家に集合だという。
そこに自分の車を置いて、Sさんの車で釣り場所に向かう手順だった。
「じゃあ土曜日の朝の4時集合な!」僕の運命の釣行はえらく簡単に決まった。
そして指折り数えて待った金曜日の夜、いつもの酒も飲まずに準備をした。
普段でも準備は楽しいが、今回はことさら楽しかった!
関東は初めてだし何処へ行くかすら聞いてない…
でも流石に雑誌とかで読んで関西よりも厳しいのは解っていた。
水平浮はアカンやろな。 少しでも水中にあった方が良いかな…じゃあザラかな。
もう浮き浮きとルアーを選んだよ。結局は普段から信用している物ばかりになったが…
師匠やシライさん以外の人と行くのは始めただなぁ~とぼんやり思ったのを覚えている。
 
当日の明け方。
僕にとって大事なのが解かったのか、珍しく嫁に見送られて家を出た。
何かあった時の為に早くでたけど、幸い迷うことなくSさんの家に着くことが出来た。
かなり約束の時間より早かったけど、Sさんは既にゴソゴソと準備をしていた。
僕はすっかり嬉しくなって挨拶をし、言われたようにSさんの車に荷物を積み込んだ。
Sさんの車は…まあ男の車というのか、そこら中に釣り道具が散乱し散らかっていた。
一人暮らしの男の部屋のようで何とも気を使わず心地よい。煙草と灰皿だらけだし。
思わず笑いながら積み込みをしてると、息子さんが出て来て挨拶をしてきた。
この子はシャイだけどとても良い子で今はトップウォーターの釣りに夢中なんだそうだ。
当時流行っていたBASFが好きで、ソリッドロッドにダイレクトリールってスタイルだった。
後年この子は行きつけのショップの店員となった。その時のあだ名がMだからM君にする。
M君は最初は人見知りをしたけど、付き合いだすとよく喋った。
本当に釣りの上手い子で、本人もその自負があるようだ。
そんなこんなでワイワイと皆で道具を積み終えて出発した。
高速への途中でSさんと同じく工場勤務のK君もピックアップした。
M君が運転し、助手席のSさんと何か相談していた。
「今日は新利根にするべぇ」とSさんが言いそれで行き先が決まった。
こんな感じでいつもSさん親子が話し合って行き先を決めた。
(今となってはその選択肢は面白い。当時は全然わからなかったけど…)
高速に乗って新利根なる川?を目指した。僕はもう嬉しくてたまらない!
目的地に着くまでもうずっと喋っていたよ。随分とうるさい奴だと思われたと思う。
 


 
その関東の釣り場は…、夢にまで見た釣り場は…、もうガックリするような所だった。

何艘もボートが浮き、フローターも何人もいた、まあそれは良いとして…
水は目を疑う位に汚かった。というよりこんなにマッディーなのは初めて見たよ。
それで全くポイントなんて無いように見える蘆原がずっと続いている…木も岩もない。
o0640048014521382019
正直に言って全く釣れる気はしないような場所だった。
「ここでやるべぇ~」とSさんは無造作に車を止めた。
場所を選んだようには見えなかったが…僕にはええ?ここなの?って感じ。
でも皆はさも慣れたように車を降り、フローターを準備し始めている。
さり気なく皆のタックルを盗み見した。SさんとK君は残念ながらスピニングだった。
Sさんは当時流行りに流行ってた常吉リグの準備をしてるし…
K君に至っては穂先が折れて短くなった竿を使っている。
別に道具を持っていない訳じゃないようだ。それどころか彼が一番道具は持っていた。
でもこれが一番使い易いそうだ…しかし、折れた竿だと~???

「タックルを見せてもらえませんか?」ってM君が聞いてきた。興味深々って感じだ。
K君も覗き込んでいる。僕は了承し、変わりにM君の物を見せてもらった。
M君のタックルは重いソリッドロッドにダイレクトのリールだった。当時流行っていたセットだ。
ルアーもエキスパートとかキールヘッドだった。使い込まれてていい感じだった。
「これはソリザラですか?」ってM君が言った。僕は当時ソリザラが好きで使っていた。
それからタックル談義が始まり、色々とお互いの道具を見せ合った。
o1024076814521382025
M君は去年まで普通の釣りをしていたのが、トップに目覚めて今は夢中のようだ。
僕が蘆は初めてだと言うとM君は「本当の際に落とさないと出ませんよ」って言うんだ。
そんなのは蘆に関係なく当たり前じゃないか?と少し反発心のような物を感じて僕は思った。
関東に限らずトップだと当たり前だろ??? 何を言ってるんだ!


 
でもね僕は間違ってたんだ…